涯 底 =新田義興=
光陰は片設けられた
今こそ鬼胎の燈穂を掻消つの時合なり
幾多返り幾十度も夢を結んだ
天下に泰平を――
打返し返々も身柄を奮い立たせた
この名も烏帽子親も大いなる矜持(きょうじ)であるが故に
目褄を側される
手向けられたのは淡いの情
臨むが敵なら
焼き滅ぼさむ天の火もがもと案定む
然れども対するは君が心
これは刻 如何すべからむ
かつて一度でも、心置いてその腕に擁かれた事はあったのだろうか・・・・
今は、その目に映ることすらもゆられられぬのか
己を謀ることに労々じていた
かかれば口上など出来ようもなかった
然るは
ただ、・・・・・・必要とされたかった
水際に轟めく大音声
例え大海の水全て使うても我が忿懣の猛火は消せぬと知れ!!
時の間
ゆくりかに濡たる頬
あぁ これは漫ろ涙
そう、・・・・・・故由などないのだ
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新田義興は新田義貞の次男だが、母の身分の低さ故か、いないものとされていた。
そんな彼の烏帽子親は後醍醐天皇。